こっそりブログ

誰にも見られてない想定で、自分の思考や感情の整理のために文字を書いています。

美しい人


主人の実家のある山形に帰ると
お義母さんは、はりきって
料理を振舞ってくれる。

作っては洗い物して拭いて片付けて
ひと段落したかと思えば
お茶入れてお茶菓子を出して
フルーツを切って

美味しいケーキがあるから
食べさせたいのって

夏にとれた野菜もサクランボも
食べさせたくて、冷凍しておいたの

前に来た時美味しいって言ってたから
用意しといたの

早朝起きて
机に乗りきれないほどの朝ごはんを作って
机に乗りきれないほどの昼ご飯を作って
机に乗りきらないほどの夜ご飯を作って

お風呂上がりには
私の髪までドライヤーで乾かしてくれる

こんなにも濃縮された愛情表情は
自分の親にもしてもらった覚えはないし
これだけの気持ちに私は応えられないし
そんな事をしてもらえる程の人間でもないから
して貰えばもらうほど苦しくもなる

孫を連れて帰れば
オムツからお風呂用の椅子、
赤ちゃん用の洗剤、石鹸
ボディソープに、ご飯用の椅子、
お皿、スプーン、哺乳瓶の洗剤、

たった2泊3日の滞在の為に
なにからなにまで用意して

私やるんで座ってて下さいと言っても
皆んなが帰ってからいつも
あれも食べさせてやりたかった
これもしてやりたかったって思うから
ひとつでも多くしてあげたいんだとか

全部用意するんで
何も買わなくて大丈夫ですと言っても
準備しながら思うのも楽しいからとか

お義母さん大変だから
来年は旅館でゆっくりしましょうと言っても
田舎のおばさんだから
そんなのは性に合わないんだとか

2日目、帰り間際に作る最後の夕食
献立は山形の郷土料理の芋煮と餃子
一見ミスマッチなこの2つは
主人の1番の好物だった。

お義母さんは主人がまだ小さい頃
この大好物の餃子を
ひとつひとつ手作りしては
夕食にお弁当にもたせていたそうだ
餃子なんて面倒で手間のかかる料理なのに

私は生涯かけても
お義母さん以上に主人を愛する事は出来ないと思う。
真似しようと思っても到底叶わない。

帰りの準備をする頃
お母さんは口数も減って行き
洗い物をしようと台所に立つ私に
皆んなが帰ってから
やる事が無かったら
静かになった家に耐えられないから
置いておいてと静かに言った。

駅の改札まで見送ってくれる時
孫を自分のコートに包んで
寒くない場所までと駅の待合室まで
抱っこするお義母さんは
どこか必死になっていて
孫を守るように抱えこんでいた

私に孫を渡すと
あったかこくして寝ろよと言って
手を振りそそくさと帰って行った

お義母さんの背中を見送りながら
振り返るのを待った
結局1度も振り返らなかった


泣いていたんだと思う。


母と子、家族の絆。
改めて考えさせられた。